♯ スポンサーサイト
この広告は60日以上更新がないブログに表示されております。
新しい記事を書くことで広告を消すことができます。
新しい記事を書くことで広告を消すことができます。
♯ スポンサーサイト
この広告は60日以上更新がないブログに表示されております。
新しい記事を書くことで広告を消すことができます。 ♯ 冨美子の昼休み休み時間に本を読んでいたら、突然、髪の毛を引っ張られた。 「冨美子って名前、ダセーよな。親に愛されてないんじゃね?」 クラスのガキ大将が笑っている。 取り巻きの男子も、オシャレにしか興味の無い女子グループも、笑っている。 家に帰れば、お祖父ちゃんとお祖母ちゃんがお帰り、と声をかけてくれて。 お菓子を食べながら、今日あった出来事を話し合う。 お祖父ちゃんに勉強を見てもらって、お祖母ちゃんが夕飯を作るのを手伝って。 仕事から帰ってきたお母さんと一緒にご飯を食べて。 お父さんの帰りを待ちながら、みんなでまた今日の出来事を話し合う。 お父さんが帰ってきたら、ご飯の準備を手伝って、またお話。 何度その話をするの。よっぽど嬉しかったのねって、お祖母ちゃんが笑ってて。 お母さんも、良かったね、って笑ってる。 お風呂に入った後、音読の宿題はお父さんに聞いてもらって。 寝る前お母さんに物語を読んでもらう。 学校行事は、仕事を休んでても来てくれるし。 休みの日には、釣りに行ったり、キャンプに行ったり。 たまに、温泉に行ったりもする。 家族みんな、私と一緒に怒って、悲しんで、喜んで、笑ってくれる。 私のくだらない話を、本気で聞いてくれる。 これって、愛されていないの? もし愛されてなかったとしても、私は家族を愛してるよ。 愛してる家族がくれた名前だから、私はこの名前が大好きだよ。 一気に話したせいか、少し息が切れた。 ガキ大将は、少しうろたえているように見えた。 「自慢かよ。ウゼー。てか、名前って、親からの最初のプレゼントだろ」 君が自慢って思うくらい、私は愛されてるってことだね。 それから、親からの最初のプレゼントって、体じゃない? 名前は2番目、もしくは3番目くらいのプレゼントじゃないかな? 命があっても、体が無きゃ生まれてこれないでしょう。 妊娠中って、気持ち悪かったり、足がむくんだり、薬も飲めないし、大変なんだって。 でも、丈夫な子どもを生むためだから我慢できるって、お母さんが言ってた。 「いやいや、生まれてからの話だし」 そう。じゃあ、名前が最初のプレゼントなんじゃない? ねえ、本の続き読みたいの、この話はもう終わりにしていい? 「逃げるのかよ。てか、ここまで必死になるって、やっぱり愛されてないんじゃねー?」 「今時、冨美子は無いよね」 「何時代だよ?」 「あれだ、ブーダロウの妹がトミコじゃないっけ」 「ちびまるこちゃん?じゃあ昭和だ」 何なの、名前をいじりたいだけなの? 名前って、単なる記号でしょう。 大勢いる人を簡単に識別するための手段。 苗字だって、血統を表す記号。 オンリーワンの名前、って言うけど。 人間って、クローンとか一卵性双生児でもない限り、遺伝子レベルで違う個体でしょう。 元々がオンリーワンでしょう。 双子だって、外見や考え方が違ったりするでしょう。 それはそれぞれの個性で、それもやっぱり、オンリーワンになるでしょう。 元々オンリーワンなのに、どうして名前でそれを強調する必要があるの? 大事なのは、名前じゃなくて、どう育てるか、でしょう。 正直、名前なんてどうでもいいの。 私を愛してくれてる家族が考えてくれた名前だから、大好きなだけ。 その後は、何も聞かず、本に集中した。 多分、今日、私は家で今の話はしない。 かわりに、今読んでいる本の話をしよう。 お祖母ちゃんもお母さんも、読書家ね、って褒めてくれる。 みんな、何も知らなくていい。 私は平気だから、何も気にしなくていいの。 心配させる必要も無い。 私は十分、愛されてるから。 ♯ かぞくのうた。0 「お父さん、結婚することにしたんだ」 学校から帰ると、珍しく、父が家にいた。 リビングのソファに浅く腰掛け、電源の着いていないテレビを見つめていた。 私が、どうしたの、と声をかける前に、父は衝撃発言をした。 結婚する、と。 「相手は、誰。お母さん、ではないんでしょう」 「仕事で知り合った人だよ。高1の双子の息子がいるそうだ」 新しいお母さんと、お兄ちゃんができるのね。 そう言って喜ぶフリができたら、良かったのに。 私は、ただ、悲しくなった。 本当の母と一緒に暮らせる日は、一生来ないのだと思い知らされた。 「そう。おめでとう」 父が選んだ人だから、良い人なのだろう。 私が言うことができたのは、簡潔な祝福の言葉だけだった。 「申し訳ないが、高校は外部に行ってもらうことになる」 母とのつながりが、完全に無くなってしまう。 遠く、か細く、つながりとは言えないつながりだけれど。 それでも、私にとってはつながりだったのに。 私は子どもだから、父に従うしかない。 それもまた、悲しかった。 「分かりました。近いし、公立だし、菊浜にするよ」 「別に、公立じゃなくたっていいのに」 「ずっと私立だったから、公立に行ってみたいの」 父を一方的に責めたい気持ちはあった。 けれど、少し考え、母の命令かもしれない、とも思えてきた。 それだったら、仕方ない。 私も父も、母には逆らえない。 真実ではなくても、自分の納得のいく事を、真実と思い込めばいい。 どうせ、父は真実を教えてくれないのだから。 「受験、頑張れよ」 「お父さんの娘だもの。楽勝よ」 まだ悲しい気持ちは残っていた。 けれど、都合の良いことだけを信じて、前へ進もうと思った。 期末テストが終わったばかりで、夏休みが始まる、少し前のことだった。 ♯ 創作メモ親友なんて言葉も知らなかったあの頃、死んでいったあの子。 あの子はきっと、私の、初めての親友。 今はもう、あの子の笑顔ですらぼんやりとしか思い出せないけれど。 それでもあの子は、私を親友だと思ってくれているのでしょうか。 生まれ変わったらまた一緒に遊ぼう、なんて思ってくれているでしょうか。 真実を知っても、許してくれるでしょうか。 ……もう、真実を知っているでしょうか。 嗚咽と共に、声にならないゴメンナサイが溢れてくる。 私がずっと隠していた真実と、恋心と、あの日見た景色。 新たに出来た秘密と一緒に、真っ赤な海に溶けて、消えてしまえばいい。 すべてを消すために、私は今、飛びます。 最期に伝えたい言葉はひとつ。 ずっと言えなかった、言葉。 ごめんなさい。 ♯ ラブレター晴れた日には、新しいものを見つけに出かけましょう。 雨の日には、思い出話をしながらお茶でも飲みましょう。 過去も未来も、ずっとずっと、一緒にいてください。 ♯ 雨の日に、カフェで。「結婚してください。君は、俺が一生支えます」 怖くなって、君から逃げていた。 だけど、逃げるうちに、君が遠くなっていくことに気付いた。 そうしたら、君が居なくなるほうが怖くなった。 だから、プロポーズした。 彼女はプロポーズを待っていた。 大丈夫だと、思っていた。 「ごめんなさい。結婚とか、もう、無理」 ぽろぽろと、彼女は涙をこぼした。 遅かった。 逃げてしまった時、すでに終わっていたんだ。 雨の降る日に、カフェで。 プロポーズは二度としない。 いや、プロポーズは、二度としない。 雨の音と、彼女が鼻をすする音を聞きながら。 一人、心の中で誓った。 |
≡CALENDAR ×
≡ARCHIVES ×
≡COMMENTS ×
≡TRACKBACKS ×
≡RECOMMEND ×
≡ PROFILE ≡
|